2013年9月6日金曜日

芸術表象論特講 # 9


こんにちは。夏休みも終わり、今日から授業がはじまりました。
7月24日におこなわれました、「芸術表象論特講」9回目のレクチャーについて少し報告したいと思います。
今回のゲストは、アーティストの眞島竜男さんでした。



眞島さんはロンドンのGoldsmiths Collegeで学んだ後、スタジオ食堂に参加。「六本木クロッシング2007:未来への脈動」など多くの展覧会に出品されています。

1回目の小林晴夫さんのレクチャーで「blanClassでおなじみ」というアーティストとして眞島さんの名前があっていました。


レクチャーでは、Goldsmiths Collegeのことや、学生の頃のイギリスのアートシーンについて、ご自身のこれまでの作品と現在の作品のお話をしてくださいました。

93年の暮れに日本へ戻って来た眞島さん。94年に水戸芸術館でおこなった展示が最初だそうです。そのときの作品は、世界堂で購入したデッサン用のヴィーナスの石膏像(高さ1メートル)を「天ぷら」にした《衣付きソーセージ》。実際に、ヴィーナスに小麦粉と卵と牛乳を混ぜた衣をつけて、ドラム缶に油を入れて揚げたそうです。

学生だった92年頃、イギリスでの授業では批評理論のレクチャーや学生のプレゼンテーションの方に関心があり、手を動かさない日々が続いていたそうです。しばらくしてから、ようやく自分の作品を作れるようになり、それが、ブリテン社(イギリスのおもちゃ会社)が出している角の生えた動物のフィギュアを「天ぷら」にするというもので、「天ぷら」の作品の始まりだったそうです。同じ頃、初めて学内での作品発表もおこないました。アーティストとしてのキャリアの第一歩は、ここになるそうです。

「天ぷら」作品の他に、映像作品もあります。《ディナー・パーティー》は、イギリスの4人の俳優に、アジア風の食卓を囲んでたわいのない会話をしてもらうというものでした。これは、Goldsmiths Collegeでおこなわれていたプレゼンテーションやディスカッションの授業が影響しているそうです。

2010年からパフォーマンスの仕事が増えてきたそうです。blanClassではパフォーマンスの作品をいくつか発表されています。
「鵠沼相撲|京都ボクシング」は岸田劉生が残した日記を下敷きにしたフィクションの日記を朗読するというものです。眞島さんは、岸田劉生が京都に引っ越してから、たくさん絵を描いていると思っていましたが、日記を読んで実はそうではなく違うこと(浮世絵を買いあさったり、骨董を集めたり、茶屋遊びをしてみようとしたり)をしていたことに面白みを見つけ出したとのことです。そこから「岸田劉生が京都へ行ったときに、たまたまボクシングを観戦し、それをきっかけに油絵の制作に立ち返ってくる」という勝手な妄想を作りあげ、それをイメージとしてパフォーマンスをおこなったそうです。

小林晴夫さんのレクチャーでも見せていただいたパフォーマンス《右/左》。眞島さんは右と左の区別がつかなくなることがあるのだといいます。「右寄り」や「左寄り」といった呼び方など、「右と左」にまつわるモチーフをパフォーマンスにしたのもので、200個くらい作った「イカリング」と「オニオンリング」の縫いぐるみを仕分けて輪投げのように飛ばす、というものもあるそうです。

眞島さんの最近の活動としては、参議院選挙まで毎日踊る《今日の踊り》があります。
これは、20121217日から選挙の前日720日まで毎日2分間踊り、それをYouTubeにアップしていくというものです。きっかけは、昨年の衆議院選挙の際に、Ustreamで《踊ります》というイベントをしたことでした。選挙に行く人が増えて投票率が上がったらいいな、という素朴な願いと、選挙という制度と自分が何かをすることが繋がると面白いのではないか、という期待があったそうです。
眞島さんはダンサーではありません。しかし、特別な準備なしで始められるところから、踊りを思いついたそうです。また2分間というのは、もともと選挙に行って来たという報告を1つもらったら1分間踊るということにしていたが、1分では練習には不十分。かといって長過ぎると毎日続かない。2分くらいの長さがあると、踊りから意味から離れていき、動きがただの動きになる。それにトレーニングにもなる、ということでその時間となったそうです。

室内での撮影もありますが、屋外で撮影しているものも多くあります。他の人たちに絡まれたりしないのか……と思いきや、意外とそういうことはないそうです。

「毎日続ける」というのは新しい試みで、当初はこれが何かの形になるとは思っていなかったそうです。しかし、ある程度の数をこなしていくと、まとまって見えてくるものがあり、新しい発見があったそうです。ずーっと続けることもできるけれど、あるところでいったん区切りをつけてみる。今回は、参院選がその区切りだった。ある程度の時間をまとまって見渡せるようになると、そのなかでできあがった形を実感することができる。毎日、繰り返していくことで、自分自身の政治に対する意識や、見知らぬ人々との関係の仕方が見えてくる。そして、自分が把握できる範囲以外の人たちにもアプローチしているけるかもしれない、という想像もできるようになったと、眞島さんはおっしゃっていました。


選挙が終わっても、踊りは撮り続けているそうです。レクチャーの後、大学内でも踊りの撮影をおこないました。

「毎日続ける」のは、簡単そうで意外と難しいです。途中で嫌になったりすることもありますが、根気よく続けていくことで蓄積されるモノや、ある程度の量になることで見えてくるものがあるのだと思います。眞島さんのレクチャーと作品を見て、学生たちも感化されればと思いました。


眞島さんのいくつかのパフォーマンス映像はレクチャーでも見せていただきましたが、見たことのない方、もう見たことある方も、ぜひ見てください。

《今日の踊り》

blanClass
鵠沼相撲|京都ボクシング」
「右/左」


それでは。


※「芸術表象論特講#8」小泉明郎さんの報告は、後日掲載致します。

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