こんにちは。今年は台風が多いですね。台風一過なのに肌寒い・・・と戸惑っています。
黄金町バザールについて
10月9日におこなわれました、「芸術表象論特講」12回目のレクチャーについて少し報告したいと思います。
今回のゲストは、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター事務局長の山野真悟さんでした。
黄金町は神奈川県横浜市中央区にある町です。戦後、京浜急行の高架下に住居をなくした人々が住み着きました。そこで生活するのに困窮していた人々は飲食店をはじめるようになり、そのうち女性がお客をとる「売春」行為がおこなわれるようになりました。いわゆる「青線」と呼ばれる地帯です。当時は日本人が中心でしたが、しだいにビジネスと化し、海外から女性を連れて来るケースや、不法滞在している外国人などによる売春行為がおこなわれるようになります。
15~20平米ほどの2階建ての住居がいくつも並び、1件に2人の女性がいます。1階は飲み屋のようなスペースをしており、2階がそういうことをおこなうスペースとなっているようです。そして、外にひさし(テント)がついていると売春をしているという目印だそうです。2005年1月まではおこなわれていたそうですが、その後、警察による「バイバイ作戦」によって一斉摘発がおこなわれました。
黒澤明の「天国と地獄」という映画の中で、犯人役の山崎努が警察をまいて逃げるシーンに、当時の黄金町が出てきます。しかし、当時は売春の他にも、麻薬などの犯罪やそういったものの温床地帯であったため、撮影をおこなうことが非常に危険とされ、町並みをセットで再現して撮影されたそうです。そのセットは、当時の状況そのものを再現されていたといいます。
このような環境を深刻な問題としてとらえていた地域では、事態の改善をはかるために、地域住民による協議会が設立されます。協議会は行政・警察などと連携をもち、取り組みをはじめます。そのひとつが、2008年に開催されたアートを生かした新しい町づくりを目指す「黄金町バザール」でした。
山野さんは、福岡にて「ミュージアム・シティ・天神」というアートプロジェクトをおこなっており、黄金町バザールのため2007年にこちらへ来たそうです。
2008年に開催された「黄金町バザール」ですが、これが終わった後にどうするのかと地元の方々から言われたそうです。「黄金町バザール」を開催しているときは人が来るけど、それがないと人がいなくなってしまう。残って続けて欲しい・・・ということで、翌年にNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターを設立し、毎年開催することになったそうです。現在スタッフは、山野さんを含めて13名です。
何でもそうですが、「黄金町バザール」はアートだけでは成立しません。大学(横浜市立大学)、地元住民の協議会、行政、警察が協力しています。他の町づくりと違うのは、警察がいるということです。警察という抑止力があることで、町づくりの活動が出来ます。それだけ、まだ危険な所でもあるということです。
「黄金町バザール」は、主に売春をおこなっていた店舗を利用しています。その店舗を市が借り受け、山野さんたちが管理をおこなうというシステムになっています。改修工事をした後にアーティストへ貸し出します。
アーティスト・イン・レジデンスもおこなっており、海外からアーティストを招聘し、こちらからも海外にアーティストを送るということもおこなっています。今年は、2人の日本人アーティストが台湾へ行っているそうです。
アーティストと作品についても、少し紹介していただきました。
また、昨年から「黄金町芸術学校」もはじめたそうです。これは山野さんが以前、福岡で1ヶ月間毎日夕方に開講するアートスクール「天神芸術学校」からきているそうです。その芸術学校を受講していたある学生が、芸術学校を修了した後に仕事を辞めて大学に入学したということがあったそうです。出来れば、そういう人の人生を変えてしまうような、そういうことを黄金町でもやってみたいという思いがあるとのことです。山野さんとしては、スタッフの人たちに本当は受講してもらいたいそうですが、なかなかそうはいっていないようです。アートマネジメント、建築、まちづくりの授業を中心に開講されているそうです。
今回は、「黄金町バザール」を中心にお話をしていただきました。横浜市はアートを通した「創造都市(クリエイティブシティ)」を掲げており、横浜トリエンナーレなどのアートイベントや施設の設立を積極的におこなってきています。黄金町を中心としたアート活動もその一環です。
しかし、アートに関する様々な団体がいて、いろいろなことをしているが、一緒にやっていこうという協調性がないという問題点も抱えているようです。
また、黄金町”バザール”という名前が災いしているのか、展覧会だと思われておらず、まちおこしだと思われていると山野さんはおっしゃっていました。そこには、それぞれが思うアートによる希望が入り組んでおり、複雑に絡み合っているのかもしれません。みんなが、アートに寄りかかりすぎていても、町はよくならず、あくまでも精神的な部分・・・これがおこなわれていればいいのですが、やはりどれだけの経済効果が起きるかという部分ばかりに、考えが向きがちとなっているようです。
学生にとっても、アートとまちづくり(おこし)という問題について考えてみるよいきっかけになったのではないでしょうか。
行ったことがある人も、まだ行っていない人も、ぜひ「黄金町バザール」を見てみてください。
黄金町バザールについて
それでは。
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