2015年2月3日火曜日

芸術表象論特講#24

こんにちは。この前降った雪が、まだ校内のいたるところに残っています。
これまで、少し更新できなかったのですが、これからどんどんご報告します。
昨年12月10日におこなわれました、「芸術表象論特講」24回目のレクチャーについて少し報告したいと思います。
今回のゲストは、オーガナイザーの礒尾奈加子さんでした。



礒尾さんは長野県出身ですが、進学した高校は東京で、今年のから慶応義塾大学環境情報学部1年生です。レクチャーでは、礒尾さんが携わっている音楽フェスについてお話してくださいました。

礒尾さんの主催している音楽フェスは「ROCK GOD DAM」といいます。このフェスを最初に開催したのは、礒尾さんが高校2年生の2012年でした。教育系のとあるNPO団体より、音楽イベントを開催しませんか、という話が礒尾さんに持ちかけられたのがきっかけでした。始めた頃は、いろいろな問題について意識しておらず、ただ誘われたからやってみただけという感覚だったそうです。
しかし、実際に音楽イベントを作るということはとても大変だということを知ります。例えば会場を借りるにしても、未成年である礒尾さんたちは誰か大人の承諾をもらわなくてはなりません。チケットを販売するということも、ひとつのビジネスなので、もしチケットが売れなかったら誰が責任をとるのか。また、沢山のお金をかけてイベントをしてもその際の責任は誰がとるのか・・・。多くの問題を抱えながら、さらなる問題も発生しました。それは、グループのメンバーが礒尾さん以外全員やめてしまったことでした。その頃にはきっかけを作った団体も手を引いてしまい、しかし、会場はすでにおさえ、出演者も決まっていたそうです。そこで礒尾さんは、自分がどうにかするしかないという責任感のもと、開催を決行しました。それが「ROCK GOD DAM 2012」だったそうです。
学校の先生や会場として借りていたライブハウスのスタッフの方々、出演してくれたミュージシャンの人たちに、1人になってしまった現状を説明し、それぞれからアドバイスを受けながらおこなったそうです。とにかく1人で、広報活動や出演者の人たちとの連絡などをやならなくてはならず、かなり大変だったとおっしゃっていました。当時は高校にも通い、さらに予備校にも通っていたために、イベント準備は土日を利用して活動されていたそうです。

この初めてのイベントのとき、出演してくれたミュージシャンの人達と話をして、今の日本のインディーズの音楽シーンのことやイベント運営の現状について知ることになります。インディーズシーンというのは、自分が思っている以上に他の人たちにはなかなか聞いてもらえない。2012年に出演してもらったミュージシャンはインディーズで活動している方々でした。礒尾さんはライブハウスに見に行っていたので、そこで良いなと思ったミュージシャンたちに出演の依頼をしたそうです。ではこのミュージシャンたちは実際にみんなが聞いているのかというと、そうではなかったり・・・。そのときに、インディーズはある一部の人たちだけなんだなぁと感じたそうです。
それだけではなく、ライブハウスにもいろいろ問題が内在していることを知ります。例えば、イメージの悪さや出演者に対してのチケットノルマ制は、多くの人が介在することを拒んでいます。

2012年のイベントが終わってから年明け頃に、次のイベント開催を考えるようになります。2013年は、礒尾さんが好きなBlack mailというドイツのバンドが結成20周年をむかえました。このバンドは2003年にサマーソニック出演のため来日していました。当時、礒尾さんは8歳だったため、ご両親に見に行くのをとめられてしまったそうです。そのことが心残りでいたので、その旨を彼らにファンメールとして送ります。すると、そのメールに対して返信があり、そんなんだったら日本へ行きますと返答してくれたのです。せっかく彼らが来てくれるなら、自分が音楽イベントを作っても良いのでは・・・と思った礒尾さんは、まだぼやっと考えていた日本の音楽シーンをどうしたらいいのかということも彼らに話、賛同してもらい、それらをコンセプトに音楽イベントを作ることを決意。活動が始まりました。
出演者のミュージシャンの方々には、礒尾さんのコンセプトに賛同してもらい、ギャランティーなしで参加してもらうことになりました。それは出演した40組すべてのバンドが了承したそうです。Black mailをはじめ海外からのバンドは渡航・宿泊費がかかります。この辺りに関しては、政府や文化団体による寄付金を利用しました。ドイツの国ではインディーズの人たちに対して手厚い保証や援助があるそうで、このイベントでも申請をしました。しかし、オーストラリアなどの方々は助成金が取れず、来日を断念したそうです。礒尾さんは当然日本でも助成金の申請や企業へ協賛などお願いしたそうですが、高校生ということで相手にしてもらえないことがほとんどだったといいます。ただ、ミュージシャンの方々が使用する楽器は、フェンダー社から提供して頂けたそうです。
メディアにも取り上げられ、出演した外国のバンドもその国では有名だっため、集客があるのではないかと過信したそうです。実際、ふたをあけたら思っていた程の動員はなかったそうです。このイベントが終わっときに、いろいろな人たちと話して、イベントの動員数は現在のインディーズの現状を現しているのではないかと思ったそうです。

実はこのレクチャーの前に、礒尾さんから学生たちへ課題が出されていました。「ROCK GOD DAMのプロモーターになろう」というタイトルでレクチャーを聞きながら、各自でフェスの宣伝方法について提案するというものでした。 hackpadへ各自がアクセスし、考えたアイデアを掲載していくことになっていましたが、レクチャー終了後に礒尾さんがアクセスしてみると、誰も発言していませんでした。ただし、授業後に用紙に書いて提出してきた学生が何人かいましたので、研究室ではスキャンをして掲載することになりました。

昨年はイベントを開催しませんでした。実は、今年、台湾でイベントを開催するために活動されているそうです。礒尾さんは、現在ある限られた音楽イベントの在り方ではなく、プロだとかインディーズだとか、日本だとかドイツだとか、そうした境界を越えた、新しいミュージシャンの発掘、そして誰もが楽しめる音楽イベントを目指しているようでした。
学生たちと同じ学生が、意欲的に活動している姿は、彼女たちにとって大きな刺激になったのではないでしょうか。

ROCK GOD DAM2013の公式HPはこちら


それでは。

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