2013年1月22日火曜日

芸術表象論特講#19

こんにちは。まだ雪が残っていて、道を歩くときに気をつけないと、滑ってしまいそうです。

昨年12月19日におこなわれました、「芸術表象論特講」19回目のレクチャーについて、少しご報告したいと思います。

今回のゲストは、文化人類学者であり、本学教授の原聖先生でした。




大学では「文化人類学」などの講義をされていますが、レクチャーでは授業で話したことのない内容として、「ネアンデルタール人、現世人類、言語」というタイトルでお話してくださいました。

非常に断片的ではありますが、内容を記してみます。

2006年に、ネアンデルタール人の発見から150周年をむかえたそうです。また、科学にはならないということから、1866年にパリ言語学会が禁止した言語起源論の研究が、2000年代に復活。2012年には第1回国際会議で、ネアンデルタールとサピエンスの交替劇プロジェクトがおこなわれました。

ネアンデルタールとは、何者なのか。30〜50万年前に、ホモ・サピエンス種の共通祖先から分かれました。25万年前に進化をし、3万年前を過ぎた頃、絶滅されたといいます。絶滅の原因は、ホモ・サピエンスが4万年前に欧州に拡散したことだとされています。
社会分化、大人数の密集、交易、遠距離の贈与といった証拠がありません。「よそ者」と接触する機会が少なかったようでもあります。35歳過ぎるまで生きていた者はほとんどおらず、かろうじて人口が維持されていたようです。

よく、ヒトとチンパンジーは近いと言いますが、ヒトは約600万年前にチンパンジーと分かれます。ゴリラはその少し前のようです。

私たちは言語を持ちコミュニケーションをおこないますが、動物たちのコミュニケーションに存在しない、「再帰性(recursion)」を備えています。「再帰性」とは入れ子状になる文章であり、無限につくることができます。これが、とっても重要となります。

「原型言語(proto-language)」には、2説あります。1、構成的(compositional)原型言語(単語があり、これに文法が加わったというもの)と、2、全体的(holisitic)原型言語(メッセージからなるコミュニケーション体系)です。この2つの説はいまだに対立をしているそうです。

今の私たち、つまりホモ・サピエンスは、言語のおかげで生き残れたそうです。FOXP2遺伝子の2つのアミノ酸の変化が、発話と言語にとって決定的であったとされています。原型言語(Hmmmmm)の分節化によって構成的言語が出現。Hmmmmmの分節化のときに、新しく見つかった単語を組み替える規則がすでに存在し、文法規則を持つ構成的言語への移行を完了させるために利用出来ました。しかし、全体的原型言語から構成的言語への移行には何千年もかかってしまいました。

ちなみに、上記した「Hmmmmm」とはホモ・サピエンスの言語。ネアンデルタールの言語は「Hmmmm」(全体的Holistic、多様式的multi-modal、操作的manipulative、音楽的musical)ですが、ホモ・サピエンスになると「Hmmmmm」 mimesisが付け加わり、mが1つ増える)となります。

2000年に発表された、アフリカでの20万年前から4万年前までの記録では、人類の行動が徐々に変化したのを示唆し、全体的原型言語が構成的言語にゆっくりと置き換わっていった。そして、ヨーロッパでは4万年前に言語を媒介にした行動(視覚シンボル、骨器、身体装飾、儀式化した葬儀、狩りの強化、長距離の交換、キャンプ地の構造)が突然出現し、ネアンデルタール人からホモ・サピエンスへの交替がなされたのだということです。


 ▲杉田先生の質問を聞く原先生


普段、私たちは息を吸って吐いて、食べて・・・誰かと話したり、何かをつくったり・・・ということを当たり前におこなっています。しかし、私たちヒトがどのように進化を遂げて来たのか。それを考えると、とても不思議な感覚になります。

もっと知りたい方は、原先生がオススメの本を紹介してくださいました。

スティヴン・ミズン『歌うネアンデルタール―音楽と言語から見るヒトの進化』(早川書房、2006)
赤沢威『ネアンデルタール人の正体―彼らの「悩み」に迫る』(朝日新聞社、2005)


それでは。

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